エージングをする事で、ETYMOTIC RESEARCH ER4SRの音質が劇的に良くなったので、事例を紹介します。
使用時間:5時間程度
不満点:低音の量感不足
前の説明では信号転写する回数が増えると劣化の機会も増えると書きましたが、実際どうなのか考えてみます。
増える事でまず最初に思い付く例はセパレートアンプです。ほとんどのアンプは、入力段 / 電圧増幅段 / 電流増幅段の3部構成で、プリアンプもパワーアンプも基本は変わりません。
上位モデルのアンプになるとボリューム部にインピーダンス補正用のバッファーアンプを装備している事が多く、更に信号を転写する回数が増えます。
※実はプリメインアンプも基板レベルで見るとセパレートアンプと同じ構成になっています。従ってセパレートアンプを例にするのは適切でないのですが DAPよりは転写回数が多い事は確かです。
もし信号転写の回数が音質に大きく影響するなら、回路設計の次元からオーディオシステム全体の構成まで今とは違う方向に進化していた筈です。
従って現状の回路設計、オーディオシステムの構成を鑑みると、信号転写の回数は音質劣化に対し直接的な原因になっていないと言えます。
※アンプ内蔵DAP + 外付けアンプの様に、同じ目的の装置が2段掛けになってしまい気持ち悪い感は否定しません。
下図は、iPod単体とiPodにM-01 Originalを接続した時の特性図です。通常の測定は負荷に抵抗器を使用しますが、今回は差が出る事を期待してHD650を負荷代わりに使用しています。※周波数特性は耳栓をして頭に装着し測定、差が無かった為THD+N以降は頭に装着せず測定(HD650は開放型)。
<周波数特性>
iPod単体とiPod+M-01の特性は同じでした。
<THD+N 歪率>
0.03~2mW位までM-01を追加しても同等の値で推移します。小音量領域のTHD+Nは残留ノイズの影響でM-01を追加すると悪化します。
<残留ノイズ>
iPod単体:1μVrms、iPod+M-01:1.7μVrms。
※聴感補正Aフィルターを通しVP-7723A、12V電源で測定した値。
音質劣化する / しないについては特性の比較で判断出来ませんが、M-01を追加した事により音質に関わる電気的な重大な劣化が生じる事は無いと言えます。
音質に関わる電気的な重大な劣化は無い事が分かったので、実際に音が変わるか確認します。
最初にお断りしておかなければならないのですが、音質の比較で違いを感じた箇所は嘘偽り無く記載していますが、程度については必ず個人差が生じます。
結果は参考程度に留め、極力ご自身で試聴し確認される事をお勧めします。▶M-01 デモ機貸出予約
使用機器
アンプ:M-01 Original Gain:Normal
DAP:WALKMAN NW-A106(以下WM)
ヘッドホン:ゼンハイザーHD650
電源:オーディオデザインDCA-12V
WMイコライザー設定:ソースダイレクトオン
音源:AWA(サブスク配信)よりランダムに選択
<条件>
音量はそれぞれストレス無く聴ける上限に調整し比較しました。
以下は WM単体 → WM+M-01 → WM単体イコライザー調整 を順に試聴し、違いを感じた項目を記載しています。
<結果サマリー>
WM単体とWM+M-01の比較
WM単体(Vol.位置96)→ WM+M-01(Vol.位置78)
WM単体でWM+M-01の音質傾向に調整
WM+M-01(Vol.位置78)→ WM単体イコライザー調整(Vol.位置99)
(結論)M-01を追加し良くなったポイント
M-01を追加する事で、良い方向に音質が変化しました。次はどの様な状態で試聴していたか把握するため測定します。
<基準レベル>
信号:1kHz 0dB 正弦波(WMで再生)
<イコライザー設定値>
<周波数特性の比較>
WM単体とWM+M-01は完全に一致、イコライザーは設定値通りの特性でした。
<信号レベルの比較>
最初に試聴したWM単体とWM+M-01は2dB程出力レベルに差がありました。
WM単体イコライザー調整は、中音のレベルをWM単体ソースダイレクトオンと同等、低高音をWM+M-01と同等に調整しました。
<楽曲再生時の信号レベル>
下の波形は、音量合わせ時に目安にした実際の曲の波形です(音量の大きい箇所約5秒)。WM単体、WM+M-01、WM単体イコライザー調整、それぞれ曲の同じ場所の波形をオシロスコープに取り込み実効電圧を測定しています。
WM単体:102mV = 0.032mW
WM+M01:129mV = 0.050mW
WM単体イコライザー調整:123mV = 0.046mW
<音量>
音量を測定する設備が無いため、HD650の元箱に記載してある感度をベースに試聴時の音量を算出しました。
算出結果、今回試聴時の音量は83~85dBでした。
アンプを変えると音質が変わる事はオーディオ界で常識ですが(数値で示せと言われても出来ませんが)、試聴した時に何故音質が違って聴こえたのか深掘りしてみます。
考えられる要素は以下になります。
<負荷の音質影響確認結果>
確認方法:
WMのイヤホンジャックに2分岐アダプターを接続し、片方をM-01に接続、もう片方に負荷を接続し、負荷有無で音質に差が有るか確認する。負荷はヘッドホン K702(62Ω)を使用。
確認結果:
音質差は判別不能でした。
音量も若干下がる筈ですが、分かりませんでした。
<音量調整結果>
確認方法:
WM単体 Vol.96 vs WM+M-01 Vol.74
双方ソースダイレクト:オン
※音質比較時は WM+M-01 Vol.78
確認結果:
音質比較時に WM+M-01で良くなったと感じた以下の部分はそのまま残りました。
音量を厳密に合わせると、帯域バランスはWM単体とWM+M-01は同じ様に聴こえました。
<結論>
申し訳けございませんが、なぜ音質差が生じるかの原因は分かりませんでした。波形の細かな違い等は探せば出て来ると思いますが、きっとそうで無いと思います。今後の課題として継続検討します。
M-01は、音質最優先で回路と部品選定を試聴を繰り返しながら開発した事は確かですので、それだけは言えます。
個人差が大きいため程度は言えませんが、少なからず以下の変化を感じると思います。
DAPの音質はハイレベルだと感じますので、何がなんでもアンプ増設必須という事は無いと考えます。
まずは好みに合ったヘッドホン・イヤホンの吟味、アクセサリー類での音質調整等を体験し、どうしても一線を越えられない場合に外付けアンプを試していただけたら良いと考えます。
とはいえ、アクセサリーも極めるとかなり高価なものになりますので、導入タイミングを知っておくために、一度デモ機を体験なれれる事をお勧めします。▶M-01 デモ機貸出予約
以上、今回はっきりしなかった音質差の原因は、今後の課題として継続検討して行きます。